沈まぬ太陽
昭和30年代―。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から十年におよぶ僻地での海外勤務を命ぜられる。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たした後も不遇な日々は続くのであった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こる。
話題の映画を観てまいりました。う〜ん、労組とかストライキとか、時代が違うからわからないんですよね。「待遇に不満があるなら辞めちゃえばいいじゃん」とか思ってしまう。
この会社がこんなに腐っている原因は、社員の意見を聞き入れない上層部だな悪いヤツらめ、と思いながら観てたんですけど、観ているうちに何だかもう・・・オッサンの社会には魔物が住んでるとしか言えません。みんな不幸だ。恩地さんのように自分の正義を貫徹し、そこに満足を得るしかないんか。厳しいなぁ。
あと、航空機墜落のシーンはやっぱ胸がキューンとなりました。500名という死亡者の数字には500のドラマがあるってこと、忘れがちです。こんな凄惨な事件で生存者があったというのは本当に奇跡だとあらためて思いました。生存者のカワカミケイコさんとは同い年だったので今でもお名前を覚えているのですが、シアワセにされていると良いなぁ。・・・って、あまりにも生々しくてこの映画がフィクションだということを忘れて観てました。
そんな感じで、大作ですがすっごく密度が濃くて、作り手の真剣さが伝わる良い映画でした。お勧めです。帰りに本屋さんで原作本をパラパラめくったんですが、本当にしっかりと取材を行った上での作品なんですね。5冊に渡る大作なんですが、機会を見つけて読んでみたいです。
- 作者: 山崎豊子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/11/28
- メディア: 文庫
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追記
原作本一巻を購入して読み始めたところなんですが、わたし思い違いをしてたよっ! 恩地さんの「労働組合の戦い」を見て、「現場の要求に従って賃上げ・増員してたら、会社なんて潰れてしまうよ。要求が通らないからストライキとか無茶を言うんじゃないよ」とか思っていた訳なんですが。
原作読んだら背景がわかった。政府の特別出資法人、しかも戦後ということで天下り政治家や旧華族さまがお気楽経営をしていて、そのとばっちりを一般社員が受けていたようです。なるほどそれでは、ストライキで総理大臣が乗る飛行機が飛ばなくなるなんて、上層部が青くなる訳ですね。恩地さんが恨まれて飛ばされまくる訳ですね。
あと、恩地さんは自ら望んで労組の委員長をしていた訳ではなかった。はめられて押し付けられたようです。これは映画以上にモヤッとする事請け合いですね。原作面白いです。